12月3日(金)、「エコピープルサロンin新木場~セミナー&交流会~」が開かれました。今回は、『経済効果を生み出す環境まちづくり』(編著:環境まちづくり研究会、編集協力:東京商工会議所・エコピープル支援協議会)の出版を記念し、出版元である株式会社ぎょうせいのセミナールーム(江東区新木場)で開催。竹村公太郎氏(日本水フォーラム事務局長、財団法人リバーフロント整備センター理事長)が安藤広重の浮世絵などを織り交ぜながら、江戸時代の流域社会と今後、目指すべき持続可能な社会について講演された後、エコユニットの活動事例発表と交流会が行われました。
竹村公太郎氏の講演と、エコユニットからの事例発表の概要などをご紹介します。
(財)リバーフロント整備センター理事長、特定非営利活動法人 日本水フォーラム事務局長、首都大学東京客員教授、東北大学客員教授、工学博士講師: 竹村 公太郎 氏
江戸の確固たる封建制度
私は、地形という下部構造から日本を見たとき、江戸の確固たる封建制度を築いたのは日本の地形であり、そこで形成された流域社会を破壊してきたのが近代の歴史だったのではないかと考えています。
日本の国土は、地形によって分断されています。人々が住む平野は、隣の平野とは山脈や海峡や川によって分断されている。それを越えて隣国と戦ったのが戦国時代でしたが、それが終わると徳川家康は三百諸侯をそれぞれの住む流域に押し込め、諸侯は流域開発に力を入れるようになりました。
当時の街道は、安藤広重が描いた東海道の浮世絵を見ても、馬1頭がようやく通れるだけの細いあぜ道でした。両側は湿地帯です。謂わば、けもの道のような街道を通らなければ、隣の街まで行けなかったのです。しかし、そうした分断された流域で生活していたにもかかわらず、方言こそあれ、人々は共通の言語を話していました。これは情報(=モノ)を運ぶインフラのシステムがあったからです。
神奈川宿や品川宿を描いた浮世絵には、多くの船が描かれています。船が日本中の海をネットワークし、さらに小運搬船が山の中へと分け入りました。江戸や大阪を中心に日本中にモノや情報が運ばれ、海から川を通って流域へと行き渡っていたのです。日本は地形で分断されていたけれども、モノや情報は共有されていました。
流域の共同体
江戸時代の人々は、そういう流域の中でコミュニティをつくっていました。共同体は、敵がいるときアイデンティティが明確になります。江戸時代、流域の共同体のアイデンティティを高めたのは、水害でした。 広重の「よし原日本堤」という絵を見ると堤防の上を多くの人が歩いています。堤防の先にあるのは吉原の遊郭です。日本橋にあった遊郭を、堤防の先に移したのです。そこへ行くため多くの人が堤防を歩き、堤防の土を踏み固めました。
治水で知られる岐阜県の千本松原では、参拝客が堤防を歩くように堤防の端に治水神社が建てられました。また、信玄堤をつくった武田信玄は、堤防を踏み固めるため、神輿が堤防を練り歩く大神幸祭(おみゆきさん)を行いました。流域の共同体の敵は水害であり、水害から集落を守ることが共同体のアイデンティティだったことがわかります。
封建から中央集権へ ―封建を破った鉄道―
江戸時代の流域社会を壊したのが近代でした。明治維新の際、大久保利通・西郷隆盛と大隈重信・伊藤博文は、鉄道敷設の是非を巡って対立しました。しかし、大隈・伊藤がイギリスの技術援助で鉄道を建設すると、当初は反対していた大久保利通も実際に乗車して「これはすごい」と実感し、インフラ投資を進めます。その後、鉄道建設は急速に進み、日本は国民国家へと邁進することになります。廃藩置県によって近代化の道を歩み始めた日本で、鉄道は流域社会を壊し、全国から人材を東京に集める装置として機能しました。
逼迫する資源
現在、地球環境は悪化しています。アフリカでは砂漠化が進み、中央アジアでは綿花栽培のための大規模取水によってアラル海が消えようとしています。中国やブラジルなど各地で水資源の枯渇や汚染がおきています。安い綿製品や雑貨は、先進国の生活をより豊かで便利にしてくれますが、それが環境への悪影響を及ぼしていることも、私たちは知っておく必要があります。
資源の逼迫も深刻です。先日、中国がリン鉱石の輸出制限をすると報じられました。農産物の肥料の原料となるリン鉱石は、世界的な肥料の需要増加に伴い争奪戦が激化しています。一方、広重が描いた「四谷内藤新宿」の絵には、馬の脚と足元の馬糞が、馬糞拾いをする子どもの目線で描かれています。完璧な循環型の文明を築いていた江戸では、人や馬の排泄物を野菜と物々交換するシステムができていたので、排泄物も大切な資源でした。つまり私たちはリン鉱石がなくても、自分たちの排泄物を肥料にすることができる。自分たちの身体から出ていくものも資源なのです。
生態系サービスで生きる持続可能な社会
近代化は川を汚し、川を壊し、人々が流域に住むことを忘れるプロセスでした。子どもの頃遊んだ川は、暗渠(あんきょ)となったり、汚染されて遊べない川になったりしました。けれども川は、自分たちのふるさとのようなところです。その水辺で再び生活できるようにするのがこれからの姿だと思います。
21世紀、私たちは再び川に戻って、生態系サービスを享受しながら、きれいな水辺で食べ、生産し、心を癒し、健康になる生活をする。それがこれからの方向だと思います。ポスト近代には、江戸の知恵と近代の技術を駆使して、生態系サービスを享受する低炭素で持続可能な日本をつくっていくこと、アジアやアフリカの途上国の人たちとも連携して、循環型でスローな文明をつくっていくことが必要となるのです。
■講演資料ダウンロード:再び持続可能な流域社会へ(エコピープル)配布資料(PDF634KB)
※講演にてご紹介いただいたテーマ、図・表の一部です。併せてご覧ください。
●エコユニット日本環境調査会
「環境債務に挑戦!」
人類はたくさんの商品をつくる一方で、アスベスト汚染や土壌汚染などの環境問題を生み出してきました。それらを「負の遺産」として残さないために、NPO法人「日本環境調査会」では、アスベスト汚染・土壌汚染などの調査技術の教授・公開やサポートを行っています。たとえばアスベストは、一度吸い込むとからだの中から追い出すことができず、20年~50年後に発症します。2010年度から企業には、アスベスト除去や土壌汚染対策などに必要となる費用を環境債務として会計処理する新会計基準が適用されました。しかし環境債務の評価や計上ができるのは一部の大企業に限られており、多くの企業にとって環境債務は「難しい」「わかりにくい」問題になっています。そこで日本環境調査会では、環境債務について客観的に認識しようという観点から、環境債務をわかりやすく解説した『環境債務の実践マニュアル』を作成し、2010年9月に中央経済社から刊行しました。このほかにも、みんなが楽しんで参加できるように、「自分の木を持つことから始めよう」という運動を行うなど、次の時代のよりよい地球環境のために活動しています。
●地球環境まもり隊(三菱UFJリース株式会社)
「オフィスでできる身近なエコ」
地球環境まもり隊は、三菱UFJリース株式会社の市場開発部の社員が「みんなでエコに取り組もう」というコンセプトのもとに結成。現在、東京・名古屋・大阪を拠点に92人のメンバーが活動しています。メンバーの約8割が女性で、19人がエコピープル、うち1人がエコリーダーです。エコユニットの結成は、部の一体感の醸成に役立つとともに、エコユニットのロゴシールを名刺に貼ることで営業先へのPRや顧客とのコミュニケーションにも一役買っています。
メンバーはオフィスで身近なエコに取り組むほか、2009年には使用済み携帯電話の回収キャンペーンに参加し、計31個の使用済み携帯電話を集めました。またペットボトルキャップを回収し世界の子どもにワクチンを届ける活動では、累計3万6200個のキャップを回収し、45.3人分のワクチン代に貢献しています。
エコ検定を受検する部員も増え、部内のエコピープルは年々増加しています。それとともに、社内でも環境に積極的に取り組む部署として浸透。今後はエコ活動を全社的な取り組みに拡大するとともに、清掃ボランティアへの参加など、オフィスの外へも活動の場を広げていきたいと思っています。
3. 交流会

後半の交流会では、軽食をとりながら、講師との対話や名刺交換をしながらの自己紹介、地域や職場での取り組みについてのミニ発表など、皆さんの日頃の思いが溢れる楽しい時間を過ごしました。またサロン後には、今後も連絡を取り合って情報交流を続けていくためのプランやアイデアなど、嬉しい報告もいただいています。